知っていますか?紙おむつのリサイクル
赤ちゃんはおなじみですが、お年寄りもどんどん増えている昨今、園や施設では紙おむつのごみが大量に出ているのはご存じの通り。でもそんな紙おむつがリサイクルされていると聞いてビックリする方も多いのではないでしょうか。いったいどんな仕組みなのでしょうか。
薬剤と混ぜ合わされ、バラバラに
千葉県松戸市にあるリサイクル業者サムズでは、集められた大量の紙おむつをドラム式洗濯機のような機会に入れて薬剤と混ぜ合わさっていきます。
サムズは2009年から紙おむつのリサイクル事業を始めました。松戸市や茨城県土浦市などの医療機関や福祉施設から回収する紙おむつは、月に20トンにもなるそうです。
プラスチックやパルプの部分を固形燃料に
紙おむつの原料はパルプやプラスチック、水を吸収する高分子吸収剤(SAP)などです。サムズでは、そのうちのプラスチックやパルプの部分を使って固形燃料を生成しているのだとか。
製紙会社に買ってもらい、暖房や発電などに使われているそうです。
サムズでは、紙おむつが資源になることにいち早く着目し、自治体も償却の負担が減る、などのメリットがありとし、取り組んでいます。
今後、紙おむつの廃棄量は増えることが予想される
環境省によると2020年度にゴミとして出た紙おむつは、家庭と事業所で217万~225万トンとされています。全ての一般廃棄物の中の5%を占めているのだとか。
これが2030年度には家庭と事業所で245万~261万トンになると予想されているそうです。
少子高齢化も背景?
背景には著しい高齢化もあります。経済産業省の生産動態統計によると、少子化によって乳幼児の紙おむつの生産量は2017年に約53万トンをピークに減少しているそうです。
一方で大人用の紙おむつは伸び続けており、2020年以は約41万トンで、乳幼児向けの紙おむつの生産量を上まりました。
2030年には大人用の紙おむつの生産は年に180万トンと予想され、乳幼児用年間65万トンの3倍近くになると予想されているそうです。
ユニ・チャームも参入
使用済の紙おむつは尿や便などの汚物を含みます。そうなると当然燃えにくくなります。燃やそうとすればするほど二酸化炭素も排出されてしまう懸念がります。
紙おむつ生産の大手、ユニ・チャームもリサイクルに動き出しています。同社は2016年から鹿児島市のある自治体で実証実験を始めました。
その自治体にはゴミを償却する施設がなく、埋め立てるしかなかったそうです。今後紙おむつが増えると処分場が満杯になってしまいます。そこで紙おむつを回収し、汚物を洗い流してから、パルプ、プラスチック、SAPを分解しました。そして漂白と消毒をして新しい紙おむつを生産し、一部の介護施設などに販売を始めたそうです。
同社は衛生的に問題のない品質にするのにとても苦労したそうです。
国も支援に乗り出している
環境省によると、紙おむつのリサイクルを実施している自治体は20カ所、検討中なのも15のみ。2030年までに100カ所に増やす目標を掲げています。
しかし、自治体からは「かえってコストがかかるのでは」「ある程度以上の回収量がないと事業化できない」といった声も多くあります。
今後国は、自治体同士の連携を後押ししたり、リサイクル施設の設備を導入する際に交付金制度を設けたりして支援する予定とのことです。
※2023年9月15日朝日新聞朝刊より