乳幼児の入院を減らせる?妊婦へのRSウイルスワクチン接種
乳幼児に肺炎などを引き起こすRSウイルスのワクチンが承認されましたが、接種が広がれば多くの乳幼児の入院を防ぐことができるとされています。
珍しいタイプの予防接種で、妊婦に接種し、生まれてくる赤ちゃんに抗体を移行させるもの。
専門家は「病気の特徴やワクチンの効果、副反応への理解を進めていきたい」と語っています。
(※2024年1月31日(水)朝日新聞朝刊を参考にしています)
年に12万人が診断され、肺炎にいたることも
RSウイルスはどこにでもある風邪のウイルスです。咳やくしゃみでの飛沫感染が多いと言われています。
2歳までのほぼすべての乳幼児が感染するとされ、最初に感染した時は重症化しやすいとのこと。特に乳幼児は気管支炎や肺炎になりやすいとされています。一方で2回目以降の感染は軽傷で済み、大人は鼻かぜ程度で済みます。
国内では2歳未満の子どものうち年間で約12万人以上が感染し、その1/4が入院するとのこと。
治療薬はなく、入院しても対症療法のみ。呼吸が困難になるため、「食事が摂れない、ミルクが飲めない」ということで病院に訪れる子どもが多いそうです。
中には人工呼吸器が必要になるほど重症化する子どももいて、医師にとってはとても厄介な病気だそうです。
心臓に持病のある子どもは重症化しやすい
心臓などに持病を持ち、早産で生まれた赤ちゃんはリスクが高いです。このような赤ちゃんには予防のために「シナジス」という抗体薬がありますが、月に1回しばらくの間接種しなければならず負担が大きいです。
それに比べて今回のワクチンは米ファイザー社製で、妊娠24~36週の間に1回接種するだけで済みます。
接種後にできた抗体が母体から胎児に移行し、生まれてくる赤ちゃんの発症や重症化を防ぐことができます。
治験には多くの国が参加
治験では18カ国の約7,000人の妊婦が参加しました。ワクチンを接種したグループと偽薬を接種したグループに分け予防効果を検証したそうです。
結果、発症を予防する効果は、生後3ヵ月以内で57.1%、重症を予防する効果は81.8%、生後半年以内では51.3%、重症化を予防する効果は69.4%となったそうです。
国内では亡くなる子どもは少ないですが、医療体制が乏しい東南アジアの国々では多く、2015年の推計によると、世界の5歳未満の合計118,200人が亡くなっているそうです。
小児科にとっては悲願のワクチンで、世界的に見てもインパクトは大きいのだとか。
日本でも重症化して入院にいたる子はある程度いるため、このワクチンが広がれば乳幼児や家族の負担が減るのでは、と期待しています。
できるだけ多くの妊婦さんが接種する方向になればいいですね。