夫婦だけの育児は限界!賢く「外」の力を借りよう。
子どもが0~2歳児期の家事は圧倒的に妻が担い、妻から夫への愛情は出産後に急激に減少し続けます。ベネッセコーポレーションが2011年に発表した調査結果は、当時「産後クライシス」として大きな話題を呼びました。この10年間で子育て夫婦の様相はどのように変わったのでしょうか。雑誌「たまごクラブ」「ひよこクラブ」の統括編集長である米谷明子さんにお聞きしました。
(※2024年4月3日(水)朝日新聞朝刊の記事を参考に要約しています。)
コロナ禍を経て変化する子育て中の夫婦の姿
子育て中の夫婦の姿は変化しているのでしょうか。
コロナ禍を経て、この2、3年でものすごく潮目が変わったと感じています。具体的には、読者アンケートにパパからの回答が寄せられるようになったり、オンラインの読者ヒアリング会にもパパの参加が増えたりしています。先日は、雑誌表紙の読者モデルの撮影に、育休中のパパが一人で赤ちゃんを連れて来られたケースもありました。
雑誌では、コロナ以前から主語を「ママ」だけにせず「ママパパ」に変えてきていましたが、コロナ禍によって産後パパ育休制度も始まり、パパたちの当事者意識ががらりと変わりました。
子どもが0~2歳で離婚する女性の割合が変わらない理由とは
ただ、子どもが0~2歳で離婚してひとり親になる女性の割合は、25年ほど変わっていません。なぜでしょうか。
数字は同じでも、背景は違ってきているかもしれませんね。2011年の調査が話題になった頃は、どちらかというと女性側の視点が強かったです。出産後にホルモンの影響で女性の体や心が大きく変わり、夫婦の関係性が変わって見えることや、育児については「どう分担するか」という話が多かったと思います。
しかし今は、パパとママどちらも同じように主体性を持って一緒にやる、一緒に選ぶ、一緒にこの時間をどう使うか、という捉え方に変わってきています。その中で、パパとママの間でお互いに本当はどうしたかったのか、どうして欲しかったのか、というコミュニケーションのところでちょっとすれ違いがある。そういう問題が大きいのではないかと思っています。
新しい育児の形と夫婦の孤立を防ぐために
パパとママが一緒に育児をする形に変わってきて、新しい問題が生まれています。
パパとママが二人だけで頑張って、二人だけの孤独に陥っている可能性もあると感じています。外とのコミュニケーションが減って孤独感が増し、どちらかがうつになったり、二人で解決できずに離婚に至ったりするケースもあるかもしれません。
どうしたら離婚の危機を救えるのでしょうか。
産後のすれ違いが解消されないまま積み重なり、熟年離婚に至るケースもありますよね。子どもが成長すれば解決するかもと思いがちですが、熟年離婚のきっかけが実は育児期から始まっていることもあると思います。
お互いに妊娠中から、どのような期待を持っているのか、家庭ではどのようなことができそうか、といった話をしておくべきかもしれません。
ただ、夫婦で話し合う時間も大切ですが、二人だけで頑張って解決しなければならないとなると辛いですよね。だから、頑張りすぎずにシッターや保育所といった外部のサービスを利用したり、愚痴を聞いてもらうだけでもいいので、外の人とコミュニケーションをとったりすることが大切だと思います。
パパ育休制度が始まったことは、男性の育休取得への大きな後押しになると思います。男性が育休をどう過ごすかという情報はまだ少ないので、今後はそうした情報を支援していきたいですね。
父親の育児関与意欲と課題:雑誌読者調査結果
育児に「今以上に関わりたい」父親は88%、「2週間以上休んだ」は43%――雑誌読者調査
ベネッセコーポレーションが「たまひよ妊娠・出産白書2024」として発表した調査結果によれば、大半の父親がもっと育児に関わりたいと考えており、4割超が2週間以上の休みを取得しています。しかし、育休を取る際には収入面や職場の雰囲気が気になるという声も多く聞かれます。
今回の調査は4回目で、2023年9月に0~1歳半の子どもがいる「たまごクラブ」「ひよこクラブ」の読者約2000人を対象にウェブで実施されました。「今以上に育児に関わりたい」と考える父親は約88%でした。また、妻の出産や育児のために2週間以上の休みを取った割合は43%で、前回の29%から増加しています。特に1~3カ月未満の休みを取った割合が増え、18%となりました。夫の休暇取得が1週間未満の場合、妻の満足度は約50%ですが、1カ月以上休むと満足度が約90%に上がります。
一方、休暇を取らなかった理由として父親が挙げた1位は「仕事の代替要員がいない」で39%、次いで「経済的な不安(収入減)」が32%、「職場の雰囲気が休みにくい」が27%でした。