子どもの権利保障のために大人たちができること
子どもの権利を保障するために、身近な存在である自治体はどのような取り組みをすべきなのでしょうか。
東京経済大学の野村武司教授(子ども法)に話を伺いました。
(※2024年12月13日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
子どもの権利保障を進めるために「自治体が果たす役割と課題」
近年は「こども基本法」の制定、「こども家庭庁」の創設、「こども大綱」の策定など、子どもを取り巻く制度の基盤が整い始め、大きく前に進んだと評価できます。
しかし、これらの施策はあくまで子どもの権利を十分に守っていくための第一歩にすぎません。
もちろん、国が担うべき課題は数多くあります。
ただ、日本の法律の仕組みでは、政策を具体的に実施する権限の約9割は地方自治体に委ねられています。
そのため、子どもにとって最も身近な存在である市区町村がどのような取り組みを行うかが、権利保障を進めるうえで特に重要になってきます。
自治体のこども計画の課題では権利保障のための条例整備が鍵になる
こども基本法では、自治体が「自治体こども計画」を策定することが義務づけられています。
しかし、その内容や政策の検証方法、子どもの権利をどのように保障するかについては、具体的な指針が示されていません。
そのため、現在最も求められているのは、各自治体がこうした仕組みを整えるための条例を制定することではないでしょうか。
実際、すでに先行する自治体では条例の整備が進んでいます。
子どもの声を政策に生かす仕組み-東京都中野区の取り組みと広がる期待-
東京都中野区では、2022年に「子どもの権利条例」が施行されました。
この条例では、子どもの権利保障について具体的に定めるとともに、子どもの意見を聞き政策に反映させる「子ども会議」の設置が規定されています。
さらに、子どもの権利を守る第三者機関として「子どもオンブズマン」が設立され、弁護士や公認心理師がその役割を担っています。
例えば、昨年度は「塾が忙しすぎてつらい」という中学生の相談や、「学校でいじめの『加害者』とされ、子どもが悩んでいる」という保護者からの相談が寄せられました。
必要に応じてオンブズマンが学校に出向き、子どもの思いを伝えながら状況を確認し、権利が守られるよう働きかけるほか、区の制度に対しても提言を行っています。
今後、このような取り組みが全国へと広がり、子どもの意見を尊重し反映させる仕組みや文化が、日本社会に根付いていくことが期待されます。