米粉パスタで「小麦アレルギーの子も一緒に食べよう!」
愛知県東郷町在住の栫正人さん(65歳)は、小中学校の教員を長年務めた後、定年退職を機に起業されました。栫さんは小麦アレルギーの方でも安心して召し上がれる冷凍米粉パスタの開発に取り組み、約1年半をかけて、素材にこだわったもちもちとした食感のパスタを完成させました。教職時代の苦い経験が、栫さんをこの商品化への道へと導いたのです。
栫さんは35年間にわたり県内の小中学校で勤務し、2020年に定年退職後、「KAKOI」という、起業や社員研修支援を行う会社を設立されました。
(※2024年9月11日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
食物アレルギー事故から学んだ経験を活かして
メニュー開発には縁がなかった栫さんですが、教員時代に食物アレルギーにまつわる苦い経験をされました。小学校では毎年、新学期の4月に教員全員が食物アレルギーの対応方法について学ぶ機会が設けられていました。
それにもかかわらず、事故は起こってしまいました。6年前、卵アレルギーを持つ児童が、卵を使用した料理を配膳したおたまを使って別の料理をおかわりした際、激しいアレルギー反応である「アナフィラキシーショック」を発症しました。幸いにも、その児童はエピペンを所持しており、迅速に駆けつけた救急隊員の処置によって命に別条はありませんでしたが、現場は大きな衝撃に包まれました。
栫さんは「あらゆる微量な成分でも命に関わる食物アレルギーの恐ろしさを改めて実感し、怖さを覚えました」と当時を振り返っています。
みんなで笑顔になれる「アレルゲンフリー給食」から生まれたアイデア
勤務先の小学校では年に3回、全員が安心して同じ料理を楽しめる「にこにこ給食」としてアレルゲンフリーの給食が提供されていました。子どもたちの顔には自然な笑顔が広がり、会話もいつも以上に弾んでいました。
この経験から、みんなが一緒に楽しめる食べ物を提供したいと考えるようになり、特に子どもたちに人気の高いパスタの開発に踏み切る決意を固めました。
子どもも安心して楽しめる「おいで食べ米!」のこだわり
冷凍米粉パスタの開発には、起業支援の際に小麦アレルギーの子どもを持つ母親から「子どもでも簡単に調理できるものが欲しい」との要望を受けたことがきっかけでした。この冷凍パスタなら電子レンジで安全に温められるため、子どもでも調理が可能で、長期保存もできるため親の家事負担も軽減されます。
「おいで食べ米(まい)!」という商品名の冷凍米粉パスタには、国産の米粉とジャガイモでんぷんを使用し、白米麺(972円)と玄米麺(999円)の2種類を用意しています。味はジェノベーゼとボロネーゼから選べ、大分県産の生バジルや小豆島産のオリーブオイル、香川県産のブランド牛など、厳選素材を使用しています。ソースには小麦を含まない醤油などを使用し、何度も試行錯誤を重ねた結果、風味豊かな味わいに仕上げました。
「美味しくなければ意味がないので、味にも徹底的にこだわりました」と栫さんは語っています。
健康食品展示会で大反響!「おいで食べ米!」とアレルギーへの想い
7月には、東京で開催された国内最大級の健康食品展示会「ウェルネスフードジャパン2024」に出展し、多くの来場者がブースを訪れ、試食には「もちもちの食感で美味しい」との高評価が寄せられました。小麦を使用しないソースも珍しく、今後はソース単品の販売も検討中です。
消費者庁のデータによると、即時型食物アレルギーの発症例は2017年の4,851件から2020年には6,080件へと増加傾向にあり、その中でも小麦アレルギーは鶏卵、牛乳、ナッツ類に次いで発症原因として4番目に多いことが分かっています。
「米粉を使用した食品の中で、パスタの認知度はまだ高いとは言えませんが、子どもたちにもっと笑顔を届けられたら」と栫さんは語ります。
冷凍米粉パスタ「おいで食べ米!」はオンラインショップで購入可能で、売上の一部はアレルギー関連団体に寄付されます。詳細についてのお問い合わせは「KAKOI」(0561・59・9398)までお願いいたします。